耳垢(みみあか)

耳垢(みみあか)

耳垢(みみあか)は、外耳道の分泌腺である耳垢腺(アポクリン腺)からの分泌物などで形成されているもので、この分泌腺には清浄作用や殺菌作用があるとされています。耳垢は乾性耳垢(カサカサのもの)と湿性耳垢(ネバネバしたもの)にわけられ、日本人の75%は乾性と言われています。

外耳道は耳の入り口から奥の鼓膜までの部分で、個人差はありますが、約3.5cmあります。その外側の1/3程度の部分にのみ、耳垢が付着します。耳垢は少しずつ耳の外に排出されていますので、自宅での耳掃除は必要ないと言われています。

ただ耳の形状の問題などもあり、耳垢が充満して塞がってしまい聞こえが悪くなるなどあれば、耳掃除は保険診療が認められている医療行為ですので、どうぞお気軽にご受診ください。

耳鼻咽喉科では、様々な器具を用いて耳垢を除去します。 耳垢が硬かったり、量が多かったりなどで取り除きにくい場合は、「耳垢水」と呼ばれる耳垢を柔らかくする薬を処方し、次回来院前にご自宅で耳垢を柔らかくしていただいたうえで、クリニックにて除去します。もしくはクリニック内にて耳垢水を15分程度使用後に耳垢を除去することも可能です。

中耳炎

中耳炎は、鼓膜の内側にある「中耳腔」と呼ばれる場所が、風邪などのウイルスや細菌の感染などで炎症を起こし発症するものです。のどのウイルスや細菌が耳管(鼻の奥と中耳腔をつなぐ管)を通って感染する場合が多いです。3歳以下のお子さんは、耳管が広く病原体が移行しやすいため、発症しやすいと考えられています。

中耳炎の症状としては、耳痛、発熱、耳閉感(耳が詰まった感じ)、耳漏(耳の穴から膿が出る)、難聴などが挙げられます。また中耳炎では鼓膜に孔が開いた状態になる「鼓膜穿孔」を引き起こす場合があります。この鼓膜穿孔は軽い場合、気づかないこともありますが、放置していると、耳の奥にある「蝸牛(聴覚や平衡感覚を司る器官)」などが存在する内耳に感染して、めまいや耳鳴りなど治療が難しい症状をきたす危険があるため、注意が必要です。

治療としては、軽症の場合、3日間は抗菌薬を使わずに経過をみることがあります。ただし乳幼児の場合は、早めに抗菌薬を使用する場合もあります。痛みや発熱がある場合は、解熱鎮痛薬を用いて症状を改善します。鼓膜が赤く腫れる、膿が溜まるなど重症になった場合は、抗菌薬の5日間内服による治療行います。また鼓膜切開による膿の排出も併せて行うこともあり、その際は鼓膜に麻酔を施しての治療になります。

難聴

難聴とは耳が聞こえにくい状態のことであり、大きく2つに分けられます。一つは外耳から中耳にかけての障害によって起こる「伝音性難聴」、もう一つは、内耳より先の中枢部分の障害によって起こる「感音性難聴」です。

伝音性難聴を引き起こす病気としては中耳炎、耳硬化症、鼓膜穿孔、耳垢による外耳道閉塞などがあります。
感音性難聴を引き起こす病気としては、メニエール病、突発性難聴、おたふくかぜ、先天性風疹症候群などが挙げられます。

このうち突発性難聴は、突然片方の耳が聞こえなくなる病気のことで、その原因はウイルス感染や血流不良による酸素不足などが考えられていますが、まだはっきりとはわかっていません。現在日本には3万5000人前後の患者さんがいると推定されており、40代~50代の方が多いとされてきましたが、現在は10代や20代の若年層でも増える傾向があります。

難聴の治療に関しては、原因となっている病気によって異なります。突発性難聴の治療に関しては、軽症から中等症まではステロイド剤や血流改善する薬などによる薬物治療を行い、経過をみていきます。突発性難聴では、およそ1/3の人が元通りに回復し、1/3の人は軽度の難聴が残り、1/3の人は回復しないと言われています。また早期に治療を開始するほど回復の可能性が高まるため、発症後2週間以内の治療開始が望ましいとされています。聞こえづらさを感じたら、速やかに受診されることをお勧めします。

メニエール病

メニエール病は「めまい」「耳鳴り」「難聴」という3つの症状が、ほぼ同時に起きるのが特徴の病気です。原因としては、耳の奥の内耳という、体の平衡感覚を司る部分に内リンパ液が過剰に溜まることによって引き起こされます。

この内リンパ液は毎日新しく作られ、それと同量を体内に再吸収することで一定の量に維持されています。このバランスが崩れることによってメニエール病が発症しますが、バランスが崩れる原因は、先天的な内耳構造の問題やアレルギー、免疫異常、血流の不足、さらにストレスや睡眠不足、疲労などが考えられていますが、まだはっきりとはわかっていません。

症状としては、視界が突然ぐるぐる回り、立っていられなくなるような「めまい」が数十分~数時間続きます。これには吐き気や嘔吐を伴う場合があります。さらに難聴、耳鳴り、耳閉感(耳が塞がるような感じ)が起こります。

これらの症状は、すべて揃わないこともありますが、数日~数週間で落ち着きます。しかし、再発することが多く、再発が繰り返されると症状が進行し、治まりにくくなってきます。特に難聴は、発症当初は低音部のみ聞き取りにくい傾向ですが、進行するにしたがって高音部も聞き取りにくくなるなど悪化していきますので、早期の治療開始が大切です。

メニエール病の治療としては、薬物治療として、めまいを抑える薬や内リンパ液を減らす薬、血流改善薬、抗不安薬などを状況に応じて使用します。さらに鼓膜の内側に薬剤を注入する治療や、それでも改善しない場合は、内リンパ液を減らすための手術を行うこともあります。当クリニックでは、治療機器として鼓膜マッサージ機とキセノン光治療器を用意しております。どなたでも使用可能ですのでお気軽にご相談ください。
また近年メニエール病は画像検査で確定診断をつけることが可能になりました。その場合は提携先の高度医療機関にご紹介可能ですのであわせてご相談ください。

外耳炎

耳の鼓膜の手前の部分を外耳と言いますが、ここに炎症が起きるのが外耳炎です。原因としては耳掃除の際に傷を作ってしまい、そこに黄色ブドウ球菌や緑膿菌などの細菌、真菌(カビ)が感染して発症する場合が多くみられます。水泳の後やアレルギーのある人、湿疹などの皮膚疾患のある人、さらに補聴器を利用している人などに発症しやすくなっています。

症状としては、外耳部分の痛みや痒み、ヒリヒリとした感覚などがあります。一部におできができる「限局性外耳炎」では腫れて耳が聞こえにくくなる場合もあります。さらに外耳全体に糜爛(びらん)がみられる「びまん性外耳炎」の場合は、長引くと耳だれやかさぶたなどがみられ、外耳が狭くなることもあります。さらに免疫が低下している人や糖尿病の人が引き起こしやすい「悪性外耳炎」では、膿や分泌物が溜まり、耳が聞こえにくくなることもあります。重症の場合は感染が頭蓋骨に拡がり、顔や頭の神経麻痺を引き起こす危険もあります。

外耳炎は軽症であれば2~3日で自然に治癒しますが、薬による治療が必要と判断した場合は、抗菌薬や消炎鎮痛薬、ステロイド剤などを、軟膏、点耳薬、内服薬などの方法で投与していきます。使用する薬は、それぞれの患者さんの症状によって決定し、その際抗菌薬の種類を決定するため、細菌の種類を調べるため、膿や分泌物の培養検査を行う場合もあります。

耳鳴り

耳鳴りとは、病気の名前ではなく「症候」のことで、周囲に音がないにもかかわらず、音を感じる状態のことです。耳鳴りの原因は多岐にわたっており、一つの場合もあれば、複数の原因が重なって起きることもあります。なお耳鳴りは10%~20%の人にはあると言われています。

本来、人間の耳は外界から届くすべての音をとらえています。しかし、脳では必要な音、価値があると思われる音のみを選択し、それ以外の不要と判断した音を無視するよう働いています。それが加齢や、様々な疾患などで難聴が引き起こされると、脳に送られる音の情報が少なくなります。すると脳がさらに音の情報を得ようと過度に反応するようになり、電気信号が増幅されて、耳鳴りが起きるようになります。現在、耳鳴りのある患者さんの9割に、難聴があると言われています。

さらに耳鳴りが起き始めると、気になってしまい、さらに耳鳴りの音を聞こうとして耳鳴りが大きくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。耳鳴りのしくみをしっかりと理解していくことが症状改善の第一歩になります。また、ストレスや不安を感じた時に、耳鳴りが悪化するという患者さんが多くいらっしゃいます。精神的な不安を取り除くために、心療内科を受診されることが必要な場合もあります。

難聴を起因とした耳鳴りの他には、慢性的な身体の痛みを原因としたもの、女性の場合はホルモンバランスの変化によるもの、さらには「拍動性耳鳴り」と言って、動脈硬化や不整脈、高血圧、さらには服用している薬の影響などによって、血液の流れに変化が生じ、通常と異なる脈のリズムが脳を刺激し、耳鳴りを引き起こすものもあります。この場合、血圧のコントロールを行ったり、服用している薬を見直したりすることで、症状が改善される場合があります。

耳鳴りに対して耳鼻咽喉科で行う治療としては、「耳鳴り順応療法(TRT/Tinnitus Retraining Therapy)」というものがあります。これはサウンドジェネレーターという補聴器に似た器具を装着し、環境音楽や自然界の波の音や風の音といった心地よい音、さらにはエアコンの音や部屋の外から聞こえてくる車の音など、通常であれば脳が無視しているような生活の中の“雑音”を、一日の内の一定時間、効くことで脳を慣れさせていくというもので、薬を使わない治療法となっています。

この療法は短期間で効果が現れるものではなく、半年~1年、場合によってはそれ以上の時間がかかる場合もあります。治療の開始にあたっては、しっかりとしたカウンセリングを行って、耳鳴りの仕組みを理解していただき、さらにサウンドジェネレーションから出る雑音は患者さんの症状に合わせて調整を行っていきます。この治療に関しては、7~8割の患者さんに効果がみられたというデータがあります。