上咽頭擦過療法
(EAT・Bスポット)
上咽頭擦過療法(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy〈イート〉)は、上咽頭(鼻の奥にある、のどの一番上の部分)の粘膜を、塩化亜鉛溶液を含んだ綿棒を用いてこする治療法です。1960年代より提唱されている治療法であり、治療する部位である鼻咽腔(びいんくう:Biinnkuu)のBを取ってBスポット療法(鼻咽腔(上咽頭)塩化亜鉛塗布療法)とも呼ばれています。
鼻腔の後方に位置し、のどの最上部にあたる上咽頭は、リンパ組織が集まっており、外部からの侵入に対する免疫反応の重要な関門となっています。慢性的な上咽頭炎によって炎症が続くと、免疫の活性化が続いてしまい、炎症性物質が放出され続け、体の様々な場所に不調きたしてしまいます。さらに上咽頭には神経線維も多く分布していて、炎症によって自律神経のバランスが崩れ、それによっても不調が起こります。
上咽頭炎上咽頭擦過療法(EAT)では、以下の3つの効果が期待できるとされています。
- ①塩化亜鉛による上咽頭の収斂・殺菌など抗炎症作用による上咽頭の炎症を鎮静化
- ②慢性上咽頭炎の影響で蓄積しているリンパ球や炎症性物質を、擦過による瀉血作用で排出することによる、脳の老廃物の脳脊髄液から静脈系への排泄や、低下しているリンパ流の機能の改善
- ③迷走神経が通る上咽頭を擦過することによる迷走神経刺激反射での炎症抑制作用
これらの効果により、後鼻漏やのどの違和感、さらには頭痛、肩こり、慢性疲労、めまい、咳などの様々な症状が改善されると考えられています。また現在、問題となっている新型コロナウイルス感染症の後遺症も、慢性上咽頭炎が関係していると言われており、上咽頭擦過療法(EAT)は、同後遺症の様々な症状の改善にも効果が期待されています。
上咽頭擦過療法(EAT)による治療にあたっては、以下のような注意点があります。
- 上咽頭の炎症が強い場合、薬がしみて、ひりひりとした痛みを感じます。
痛みが強い場合、数時間、もしくは翌日まで痛みが残ることがあります。
強い痛みが出る場合のほうが、その後の症状が改善するより傾向にあります。 - 薬を塗った後、翌日くらいまで唾液に血が混じることが続く場合があります。
この出血も上咽頭の炎症が強いほど強く出る傾向にあります。 - 薬を塗った後、鼻水や痰が数時間程度続くことがありますが、これは上咽頭の粘膜が薬で刺激を受けたためですので心配はありません。
- 治療後の飲食には特に制限はありません。
- 治療期間中に、薬を塗る前よりも症状が強くなる、頭が重く感じる、顔が腫れぼったくなる、ということが一時的起こる場合があります。