扁桃炎

扁桃炎

扁桃とは、鼻や喉を通じて細菌か体内に侵入してくることを防ぐ役割を担うリンパ組織で、口蓋垂(のどちんこ)の両サイドにあるものです。6~7歳で一番大きくなり、その後は次第に小さくなって、大人ではわからないくらい小さくなりますが、ここに細菌やウイルスが感染してしまい、炎症を起こして様々な症状を引き起こすのが扁桃炎です。

原因となる菌としては、レンサ球菌(A群β溶連菌)やブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌などがあります。またウイルスとしては、EBウイルスや単純ヘルペスウイルスなどの感染により扁桃炎が引き起こされる場合があります。

症状としては、発熱やだるさなどの風邪症状から始まり、のどに違和感を覚えるようになって、次第に激しいのどの痛みを引き起こします。のどが痛くて物が飲み込めない、という場合もあります。さらに高熱が出て、頸部が腫れることもあります。発症するのは、のどの片側のみのこともあれば、両側の場合もあります。

溶連菌が原因となっている場合は、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症起こすことがあります。またこうした扁桃炎が長引いたり、何度も繰り返したりするようになると、習慣性扁桃炎に至ることがありますので、注意が必要です。

扁桃炎は、ウイルスが原因であれば、基本的に症状を抑える非ステロイド性消炎鎮痛剤などによる対症療法になります。細菌が原因の場合は、対症療法に加えて、抗菌薬を使用します。重症で物が飲み込めないといった場合は、入院しての点滴投与を行います。また、扁桃炎の再発が長期間続いている場合は、手術によって扁桃を摘出することも可能です。当クリニックでは、入院や手術が必要と判断した場合、連携する病院をご紹介いたします。

上咽頭炎

のどは上咽頭、中咽頭、下咽頭に分けられており、口を開けて目に見える部分が中咽頭にあたり、それより上側が上咽頭、下側が下咽頭にあたります。上咽頭は鼻腔の一番突き当りにもあり、この部分に炎症が起こるのが上咽頭炎です。この部分は口を開けても見えないため、診断が難しい疾患でもあります。

上咽頭はリンパ組織があり、多くの免疫細胞が集まっていて、外部から侵入した病原体に対応する場所となっています。そのため炎症が起こりやすくなっているのです。炎症が起こるもっとも多い原因としては風邪症候群で、鼻とのどの間の痛みや、のどの奥に鼻水が垂れ込んだり、のどに違和感を覚えたり、さらには痰、咳、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。

この炎症が、ストレスなどが原因で長引いてしまうと、慢性上咽頭炎となってしまいます。慢性症咽頭炎になると、炎症性物質が血管を介して、離れた臓器に炎症を引き落とすことかありますので注意が必要です。その例としては、ネフローゼ症候群、IgA腎症、掌蹠嚢疱症、乾癬、アトピー性皮膚炎などが知られています。
治療としては、炎症の原因を探り、原因となっている病気への対処を行います。細菌への感染が原因であれば抗菌薬を用いる場合があります。またウイルスが原因となっている風邪症候群等の場合は、安静にし、栄養や水分の補給を十分に行って、保温、保湿に努めます。症状によっては消炎鎮痛剤で症状を和らげる場合もあります。

また上咽頭炎への有効な治療として、EAT(Epipharyngeal abrasive therapy、上咽頭擦過療法)があります。詳しくはこちらのページをご覧ください。

上咽頭擦過療法のページ

アデノイド

アデノイド(adenoid)とは、鼻腔と咽頭の間にあたる上咽頭にある咽頭扁桃そのものを示す言葉ですが、疾患名として、その咽頭扁桃が病的に腫大している状態を示す扁桃の増殖性肥大症(アデノイド肥大)を指す言葉としても使われる場合もあります。アデノイド肥大は、基本的に小児に多い病気です。

通常、小児ではアデノイドは肥大していることが多く、3歳くらいから大きくなり始め、5~6歳でピークとなり、10歳くらいまでには小さくなります。これが何らかの原因で免疫反応か過剰に活発になり、アデノイドか過度に肥大してしまうと治療が必要となります。

アデノイド肥大による症状としては、鼻の空気の通り道が狭くなるため、鼻づまり、それによる口呼吸、いびきなどが起こります。さらに合併症として、急性中耳炎や滲出性中耳炎、慢性的な鼻づまり(鼻閉)により口呼吸を続けることで起きるアデノイド顔貌(口を開け舌をつきだした顔つき)、睡眠時無呼吸症候群が起こることもあります。

睡眠時無呼吸症候群のページ

治療としては、風邪などによる急性の炎症によってアデノイドが一時的に腫れている場合は、炎症を抑える内服薬や点鼻薬で症状の改善が期待できますが、日常的に肥大してしまっている場合は、薬の効果は期待できません。症状が続くと、睡眠の質の低下から、日中の強い眠気による居眠り、集中力の低下などが起こります。アデノイド顔貌が現れている場合、成長期前の小児では鼻呼吸を意識的にするようにさせることで改善が可能とされていますが、呼吸障害や睡眠障害が続く場合、また成人の場合は扁桃摘出の外科的切除を考慮する必要があります。当院では手術が必要となった場合は、連携する医療機関をご紹介いたします。

咽頭がん

咽頭がんは、できる部位によって「上咽頭がん」「中咽頭がん」「下咽頭がん」に分けられます。咽頭がんを引き起こすものとしては、過度の飲酒や喫煙習慣が考えられています。これらの発がんの誘因となる物質が、口腔から咽頭部に触れることが、癌の発生に大きく関わっています。

またリンパ系組織が発達している中咽頭がんでは、ヒトパピローマウイルスへの感染が発がんに影響していることが知られています。この他、上咽頭がんではEBウイルスの感染も原因として考えられています。

上咽頭がんについて

鼻の奥から口蓋垂(のどちんこ)のあたりにできるがんで、症状としては、耳閉感(耳が詰まる感じ)、難治性の中耳炎、鼻出血、鼻閉(鼻づまり)などがみられます。進行すると脳神経に進展し、物が二重に見える、視力低下、顔面の感覚麻痺等が起こります。この頸部転移で上咽頭癌が発見される場合もあります。治療に関しては、放射線治療や、化学療法(抗がん剤)が中心となります。上咽頭癌では放射線治療の反応が良い腫瘍も多くなっています。

中咽頭がんについて

口蓋垂のあたりから、舌の付け根までの範囲にできるがんで、症状としては、食べ物を飲み込むときの違和感、のどが染みる、痛むなどの感じがあります。さらに進行すると血痰や呼吸困難、頸部のリンパの腫れなどを引き起こします。治療に関しては、早期であれば手術による切除、放射線治療により、機能障害を残さずに治療することも可能です。ヒトパピローマウイルスの感染による場合は、放射線療法、化学療法の効果が高いとされています。

下咽頭がんについて

舌の付け根の高さから、食道の入り口までの範囲にできるがんで、症状としては、声がかれる、のどの違和感や痛み、血痰などの症状がみられます。進行すると嚥下障害や呼吸困難を引き起こします。治療に関しては、早期であれば、咽頭を温存した手術による切除、放射線療法、化学療法による治療を行います。進行してしまった場合は、咽頭全体の切除が必要となり、失声(声が出ない状態)となります。

当クリニックではファイバースコープ等を行い、がんの早期発見につとめ、咽頭がんと判断した場合は、提携する専門の医療機関を速やかにご紹介いたします。

喉頭がん

喉頭とは、いわゆる「のどぼとけ」のところにあり、鼻や口から取り込まれた空気は気管へ、飲食物は食道へというように、気管と咽頭を振り分ける役割を担っている器官です。喉頭には左右一対の声帯があり、左右の声帯とそれらに囲まれた空間を声門といいます。また、声門より上を声門上部、下を声門下部といい、喉頭がんはできる部位によって、「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」に分けられます。

喉頭がんの原因としては、喫煙と飲酒の影響が知られています。特に喫煙に関しては、喉頭がんの90%は喫煙者に発症するとされています。また飲酒に関しては、アルコールの分解過程で生じるアセトアルデヒドが有害物質として知られており、特に飲酒をすると顔が赤くなる方は、アセトアルデヒドに対しての分解能力が弱く、飲酒によるがんの発生リスクが高まると考えられています。

原因として他には、アスベストなどの有害物質に長期にわたって晒されること、声帯の酷使、逆流性食道炎、ヒトパピローマウイルスの感染などが挙げられています。

症状として、「声門がん」には、声枯れがあります。喉頭がんの中では発症割合が最も高く、声枯れの症状が早くみられるため、早期発見しやすいがんです。また「声門上部がん」は、のどの違和感や、ものを飲み込んだ時に沁みる、痛みがあるなどの症状が出やすくなっています。「声門下部がん」は、進行するまで症状があまりなく、発見が遅れる場合が多い喉頭がんです。

これらは進行すると、のどの違和感、声のかすれの他、首のリンパ節に転移することでの首のしこり、咳や血痰などの症状が現れることもあります。

喉頭がんの治療では、がんの発症した部位、進行の度合い、喉頭温存(声を出す機能を残すこと)の希望の有無などによって、治療法が選択されます。治療法としては放射線治療、手術治療、場合によっては放射線治療と化学療法を同時に行います(化学放射線治療)。声門下部がんでは、放射線治療の効果が薄く、手術を行うことが多くなっています。

早期の喉頭がんでは喉頭温存手術や化学放射線治療を行い、喉頭温存を希望しているが、がんが進行している場合は、化学放射線療法が選択されます。ただし、がんの進行度合いや広がりによっては、手術によってがんを取り除く場合があります。

当クリニックではファイバースコープ等を行い、がんの早期発見につとめ、喉頭がんと判断した場合は、提携する専門の医療機関を速やかにご紹介いたします。

味覚障害

味覚に障害が現れ、味を感じる感度が消失したり低下したり、あるいは本来と異なった味を感じたりする疾患です。何も口に入れていないのに塩味や苦みを感じる、何を食べても味がしない、おいしくない、といった症状があらわれます。以前は高齢者に多い疾患と考えられてきましたが、近年では若年層でも多くみられます。また、新型コロナウイルス感染症でも、味覚障害の症状がでることが注目されています。

味覚障害が起きる原因として最も知られているのが、亜鉛不足です。味覚は、咀嚼され、唾液と混じった「味を持つ物質」が、舌やその周辺にある味細胞の受容体で感知され、神経を通じて大脳の味覚野に伝わることで認識されます。しかし亜鉛が不足すると味細胞の働きが阻害されて、味覚障害が引き起こされます。

他の原因としては、加齢による味覚の減退、風邪などの鼻づまりによる嗅覚低下の影響、舌苔など舌の表面の異常、薬の副作用やがんの放射線治療の影響、顔面神経麻痺や脳梗塞・脳出血、聴神経腫瘍、糖尿病神経症などの神経系の障害などがありますが、まだはっきりとわかっていない部分もあります。

味覚障害の治療としては、亜鉛不足か疑われる場合は、亜鉛含有剤を処方いたします。その他、疾患が原因と考えられる場合は、その病気に対する治療行ったり、薬剤が原因である場合は、服用の中止か種類の変更を考慮したりします。また漢方薬を用いる場合や、状況によっては抗不安薬を使用する場合もあります。

新型コロナウイルス感染による味覚障害は、舌の味覚をつかさどる組織である味蕾や神経へのウイルスによる障害、あるいは嗅覚障害に伴って食べ物のにおいがわからないことによる風味の減退が考えられていますが、まだはっきりとはわかっていません。

味覚が鈍くなると、甘いものや塩辛いものを過剰に摂るようになり、生活習慣病を引き起こしたり、悪化させたりする危険もあります。変だな、と感じたら、一度お気軽にご相談ください。