めまい

めまい

人間に備わった平衡感覚は、体のバランスを保つ機能で、この平衡感覚を保つ機能に異常が起きると「めまい」が発生します。平衡感覚は、耳の内耳の耳石器や三半規管、眼、手足の皮膚や筋肉、関節などから得られた情報(体性感覚)を脳が整理・統合し、体の各器官に指令を出すことによって維持されています。耳や脳に障害が起きると、その機能が崩れ、めまいが引き起こされます。原因として一番多いのが、耳の奥の内耳のトラブルです。

めまいの症状は、大きく分けると、「回転性めまい」と「浮動性めまい」の二つとなります。

回転性めまい

急に自分や天井、景色などまわりのものがグルグルと回る間隔に襲われるものです。多くは横方向の回転を感じますが、縦方向の回転を感じる場合もあります。まっすぐに立っていられなくなったり、嘔吐したりします。回転性のめまいは一定期間続き、その後は消失するのが一般的です。回転性めまいを引き起こす病気としては、メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、小脳の血管障害などが挙げられます。

浮動性めまい

地に足がついていないような、「ふわふわと雲の上を歩く」ような感じを覚え、歩きにくさを感じる場合もあるものです。地面がゆれるように感じるときもあり、両側の内耳の障害によって起こる場合が多くなっています。回転性めまいのように歩けなくなるほどではありませんが、いつの間にかめまいか始まって、長時間あるいは何カ月も続くことがあります。原因としては、血圧の上昇、自律神経の失調、ストレスなどがあり、高齢の方によくみられるものです。

この他に急に立ち上がった時に、立ちくらみのようなめまいや、気が遠くなるような感じを覚えるときもあります。これは耳や脳の異常ではなく、脳の血流が一時的に不足することで起きるもので、起立性血圧症や貧血、ストレス、過労、自律神経の失調などがあると症状が現れやすくなります。

めまい引き起こす疾患としては、
以下のようなものがあります。

メニエール病

回転性のめまい、片方の耳の耳鳴り、難聴(耳閉感)の3つが同時に発生し、多くの場合、吐き気を伴います。耳の奥の内耳の病気で、症状は10分~数時間続きます。過労やストレスによって引き起こされることもあり、危険な病気ではありませんが、放置すると耳鳴りや難聴が進行する場合もあります。治療としては抗めまい薬、利尿薬、漢方薬などによる薬物療法が中心となります。

良性発作性頭位めまい症

起き上がろうとした時や振り返った時など、頭の位置を変えた時に、突然めまいを感じるものです。内耳の耳石の障害が原因と考えられており、頭部の外傷や慢性中耳炎後に発生することがあります。頭の位置を固定し、安静にしていれば次第に回復し、長時間続くことはありません。めまいの中では一番多いもので、耳鳴りや難聴などにいたることもなく、慣れることによってめまいは起こらなくなります。場合によっては、抗めまい薬の内服や、耳石置換療法(エプリー法)を行うこともあります。

前庭神経炎

前庭神経とは、耳から脳に続き平衡感覚を伝えるもので、この神経が炎症を起こすことで発症します。強い回転性めまいに加え、吐き気や嘔吐も伴いますが、耳鳴りや難聴は起こりません。数時間から数日続くことがあり、発作中は眼振(眼球が不自然に揺れ動く)が見られます。風邪を引いた後などに現れることが多く、危険なめまいではありません。抗めまい薬を服用して様子をみていきます。

突発性難聴

突然、片方の耳が聞こえにくくなることが特徴で、強い耳鳴りが伴い、20~60%ほどの患者さんに回転性めまいが起こります。重症の場合は全く聞こえなくなりますが、発作は1回で繰り返すことはまれです。ウイルス感染や内耳の血流障害が原因とされており、過労やストレスによって引き起こされることが多いと考えられています。ステロイド薬や抗めまい薬の服用による薬物療法の他、重症な場合は高圧酸素療法などの治療法があります。

脳梗塞・脳出血

脳の血管が動脈硬化により狭くなっているところに血液の塊が詰まる脳梗塞では、血流が止まり脳の組織が破壊されることで、回転性めまいが起こり、つまずいたり転倒したりすることか多くなります。また手足のしびれや、意識障害をともなうこともあります。 また脳内の血管が破れて出血する脳出血では、脳の組織が破壊されたり障害されたりします。それが小脳や脳幹部に及ぶと、強い浮動性のめまいや頭痛、吐き気・嘔吐、手足のまひなどの症状をきたします。これらの場合、早急に救急車を呼ぶなどの対処が必要です。

その他めまいを起こす疾患

めまいを引き起こす疾患としては、この他に帯状ヘルペスによる重症の顔面神経麻痺でめまいを伴う「Ramsay Hunt症候群」や、ダイビング時の圧外傷などが原因で起こる「外リンパ瘻」、さらには「聴神経腫瘍」など、めまいの原因となる病気は様々です。まためまいは、高血圧や更年期障害で起こることもあります。めまいにお悩みでしたら、お早めにご相談ください。

顔面神経麻痺

顔面神経麻痺は、病気や外傷によって顔面の表情筋を動かす顔面神経が麻痺してしまい、顔の動きが悪くなってしまう病気です。顔の片側が曲がったような状態になる、瞼が閉じない、食べ物が口からこぼれてしまう、さらには味覚の異常や目の乾き、音が響くなどの症状が現れます。通常は片側だけが麻痺することが多く、両側が麻痺することはまれです。

顔面神経は脳から出発し、耳の後ろの骨の中(側頭骨内)を通り、耳の下から枝分かれして、約20種類ある表情筋に分布しています。この顔面神経のどこかに障害が起こると、うまく表情筋を動かせなくなって、症状が現れます。障害が起こる部位によって、「中枢性顔面神経麻痺」と「末梢性顔面神経麻痺」に分けられます。

「中枢性顔面神経麻痺」は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害、生まれつきの病気であるメビウス症候群などが原因となりますが、全体の1%以下で、ほとんどが「末梢性顔面神経麻痺」となっています。

「末梢性顔面神経麻痺」の原因としては、まず、ベル麻痺、Ramsay Hunt症候群など、ウイルスによるものが多くなっています。ベル麻痺は顔面神経麻痺の約6割を占めるもので、単純ヘルペスウイルスが主な原因となり、40歳代に多くみられます。またRamsay Hunt症候群は水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で、一度水ぼうそう(水痘)に罹ったことのある人が、体の免疫力が低下すると体内に潜んでいたウイルスが再活性化し、顔面神経に炎症を引き起こすことで発症するものです。

この他、交通事故などによる頭部や顔面の損傷が原因のもの、耳下腺腫瘍など腫瘍によるもの、中耳炎などの耳の炎症によるもの、さらには糖尿病や白血病などの全身疾患や、ギランバレー症候群などの自己免疫疾患なども末梢性顔面神経麻痺の原因となります。

顔面神経麻痺の治療に際しては、まず原因や神経が障害されている部位、障害の程度などを調べるため、各種検査を行います。検査としては、血液検査、聴力・味覚・涙分泌検査、画像検査、筋電図検査などがあります。

治療としては、ウイルス等が原因の炎症による場合、ステロイド剤や抗ウイルス薬による薬物療法を行います。場合によっては神経の圧迫を摂るために、外科的な処置をとることもあります。外傷や腫瘍が原因の場合は、薬物治療による回復は難しく、外科的な神経再建術を行う必要があります。当クリニックでは、手術や検査など紹介が必要と判断した場合、提携する医療機関をご紹介いたします。

頸部腫脹

頸部腫脹とは、頸部に腫れがみられる状態の総称で、代表的なものとして以下のようなものがあります。

頸部リンパ節腫脹

頸部には、口や咽喉からの病原体などの侵入に備え、多くのリンパ節が集まっています。 このリンパ節が腫れた場合を、頸部リンパ節腫脹といいます。腫脹の原因として代表的なものは、炎症と腫瘍です。

炎症はウイルスや細菌が感染することによって起こるリンパ節炎があり、リンパ節腫脹の多くは、このリンパ節炎です。頸を押したり曲げたりすると痛みが現れる場合もあります。小児にもよく見られますが、その場合、扁桃炎や虫歯の炎症が原因となり、細菌がリンパ節に入ることで発症します。通常は抗菌薬や抗消炎鎮痛薬の投与により、1~2週間で症状は改善します。ただし、糖尿病の合併症である皮膚感染症や、結核性リンパ節炎が原因の場合は、それぞれの病気に対する治療が必要となります。

腫瘍の場合は、リンパ節そのものが悪性化する悪性リンパ腫と、のど、甲状腺、食道など他の部位のがんがリンパ節に転移して発症する転移性リンパ節があります。まず腫瘍が頸部だけに限定しているのか、他の部位にも及んでいるのかを診断した上で、抗がん剤などによる治療を行います。転移性のリンパ節の場合は、元のがんの治療とともに、リンパ節の治療も行う必要があります。

当クリニックでは、がんを疑う所見などがある場合は、より高度な検査や治療ができる医療機関をご紹介いたします。

この他、頸部腫脹には、伝染性単核球症、組織球性壊死性リンパ節炎、サルコイドーシスなど、見逃してはいけない疾患による場合もあり、頸部に何らかの異常を感じましたら、お早めにご相談ください。